2022年6月、ロシアがウクライナに侵攻して4ヶ月。
それによって、太平洋側でも中国への警戒が高まっていて、日本もその渦中にいる存在であることは間違いありません。
そして、我が国の首相(岸田文雄氏)も、積極的に対外的な動きをされているようではありますが、
そのなかで、どうしても気になることがあります。
それは、「法(ルール)による統治」の実現に向けては、
ただ「法による統治」を声高に主張することで、相手がそれに聞く耳を持ってくれることを期待するしかない、と信じ切っているのではないかと思われる節があるところです。
それは、首相のみならず、産経新聞なんかもそんな印象で、心の底からそう信じているだとすると「法の成り立ち」を知らない浅はかな知性と思われるので、そのことを書いておきたいと思います。
法とはそれを強制する権力と一体である。国際社会において「強制する権力」とは「武力」以外に今のところ無い。
それはもうこの見出しに書いてあることに尽きるのですが、「法」と「それを従わせる強制力」はセットです。
強制力がなければ「法」は有効に機能しません。そのことは以下のブログで記載しました。
記憶の糸「国際司法裁判所での決着」は理想主義 ※韓国・竹島問題に寄せて
そして、国際社会においてその「強制力」は「武力」以外に今のところありません。
「国際法による統治」というのは、これは理想主義で、遠い未来でそうなるといいね、という程度のものです。
ロシアのウクライナ侵攻で、ロシアがそれを体現してくれましたが、ウクライナを従わせようした軍事力こそが強制力なのです。この現実から目を背けない方がいいでしょう。
ちなみに、国連は強制力を持ちえません。強制力の最終形である「武力」が存在しないからです。
もちろん「国連軍」なるものは存在し得ます。が、これが存在したのは朝鮮戦争の一度だけです。それ以降はありません。
ちなみに、ロシアによるウクライナ侵攻だって、南米のほうではロシア支持の国が多くあります。
友好国の中国はもちろんのこと、インドですら表立って批判していません。
たしか東南アジア諸国でも、表立ってロシアを批判していないと思われます。
各国の合意によって組成される国連軍など、まだ当分のあいだ組成されることはないでしょう。あるいは未来永劫ないでしょう。
冷たい現実ですが、それが現実ということです。
だから、もし「法による支配」を求めるなら、「法に違反したときに制裁を加えるだけの枠組みや武力」のことを同時に考える必要があって、
そういうことを抜きにして「法による支配」を言っているとするなら、憲法9条を盾に世界平和を叫んでいることと同じで、現状に対して何一つ改善を加えれない無知蒙昧なスタンスなのです。
果たしてこういったことを岸田首相が理解されているのかどうか。
私がそう思うのは、岸田首相は、
ロシアが世界に対して「核の恫喝」をした際に、この国と領土問題を抱える日本における「核武装」の議論の場自体を、「非核三原則を堅持する我が国の立場から考えて認められない」として封殺したからです。
引用国際有事に その人の素の知性が出る ~ロシアのウクライナ侵略時の橋下徹氏、本田圭佑氏、岸田首相、他~
これは、非常事態に日本が取り得る可能性を考えることそのものを放棄しているので、ちょっと危ないんじゃないかと思い、ここに危惧を呈しておきたいと思います。