ビジネス思考を政治へ流用して評価するケースがありますね。
理想と現実のギャップに課題を見いだし、それを解決するという観点から、今の政治を評価するというものです。
この思考法の最大の特徴は、「課題は解決されることを前提」としていることであり、「提示された解決策の中で最も利益が最大化されるものを選ぶ」というものです。
少し前の尖閣諸島、地震直後の北方領土など、この思考法での評価があったように思います。
すなわち、どちらかの国に帰属をさせてしまうのは難しいため、共同開発を提案して利益を得ようというものです。
私もコンサルタントであるがため、この思考法を多くに当てはめはしますが、やはり国家間取引、とくに外交については、これは当てはめない方がいいと思うのです。
なぜならこの思考法は、市場のルールが守られることを暗黙の前提としたものだからです。
つまり、共通の市場のルールにお互いが従えば、共同開発した場合に「最大の利益」を得ることができるというわけです。
ゆえに、このルールに相当する、「お互いの共通の理解」、がそもそも存在しない国家間の外交戦争においては、上記は通用しない、私は考えます。
そんなことは、ロシアがウクライナに対して天然ガスのパイプラインを止めると脅してみたり、中国がレアアースを輸出しなくなったり、白樺と呼ばれる海底油田の開発で勝手に採掘を始めたのをみれば自明かと思われます。
そして、この外交戦争に負けた者は、勝った者のルールに従わされ、権益や安全保障上、関係のない他の国々は黙認するというのが、この手の取引のあり方だといえます。つまり取り返しはつかない、ということです。
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思うに、領土や資源が絡む問題は、解決されることを前提できないのではないでしょうか。どちらかというと、民族紛争のような問題に近いかと思われます。
ゆえに、永遠の未解決問題として、緊張状態を維持する必要があると思います。そして本気で取り返す気があるのなら、何か変化がきたとき、動き出すべきだと思います。
悲しいことに、これをいま、中国・ロシア・韓国が実践しています。東日本大震災で日本が混乱しているところに、北方領土に韓国の投資を呼びかけてみたり、北でも南でも、戦闘機が国境ギリギリを飛行してみたりと。。。
これが外交の現実であり、ビジネス思考で、参加者全員の利益の最大化などとは程遠い、彼らは利益のすべてを獲得する方向にのみ動くでしょう。
解決できない問題を、解決可能なスキームのうえで進めようとすれば、事態は取り返しのつかないところまで進むと思います。ビジネス思考の、外交への適用はまさしくその好例ではないでしょうか。