コロナ流行によって明らかになったのは、多くの人はリスクゼロでないと、身動き取れないということです。
感染リスクが少しでもあるなら、リスクがゼロになるまで厳格に自粛すべきである、というものです。
そして、この「リスクがゼロ」が、実は錯覚にすぎない、ということに気づかないということです。
コロナの感染は、確率の問題です。
だとすると、交通事故にあう確率や、風邪にかかる確率や、・・・にかかる確率と同じです。
罹患したら重症化する、という話がありますが、それはどんな病気だって同じだし、今のところ、コロナで重症化しやすくて亡くなるのはお年寄りが殆どです。
それは、インフルエンザで無くなるのと同じです。
だから、コロナだけを取り立てて議論するのは、元来おかしいと気づくべきなのです。
が、コロナだけが注目されて、そして、「自粛、自粛、自粛」で、青森の田舎では、お盆に東京から帰省した人の家に、ビラを置く人が出る始末でした。
日本にはゼロリスク思考だらけ
しかしよくよく考えてみると、日本にはこの手のゼロリスク思考が蔓延しています。
自衛の軍隊を持たないなんてありえないのに、先の大戦で凄惨な状況になったので、二度と戦争はしません・軍隊を持ちませんとして、憲法9条を未だに改正できていない。
これも、「戦争をするにも軍隊がなければできない」。ゆえに、軍隊を持たなければいい、という幼稚なゼロリスク思考。
ちなみに、これによって、他国から攻められたときに反撃できないという巨大リスクを背負っていることに気づかない。
そもそも「原子力」=「放射能」=「原爆」あたりから、東日本大震災の原発のメルトダウンで、原発Noとなったが、これも次に同じ災害が起きたときに問題ないようにすればよい、という進歩を放棄。
そもそも止めてしまったら、この国はもう進歩しない。ということに気づかないという幼稚なゼロリスク思考。
SuicaやICOCA、PaypayやメルPayもそう。
ひとつ成功したらこぞって群がる。誰かが成功したら、失敗リスクがゼロと思ってやっと始める。そして今度は、過剰なまでにプレーヤーが溢れる。
このなかの2番手以降の企業に属する社員は、創造力を何ら発揮することなく、ただ猿真似プロダクトを、ノーミスを要求されて作っているのを想像すると、なんとIT人材の無駄づかいであろうかと思います。
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結局のところ、お互いに消耗しているだけで結局は自分たちの首を締めていることに気づかない幼稚なゼロリスク思考。
家電もそう。サイクロン掃除機でダイソンがヒットすると、日立などはそれを出す。
ルンバもヒットすれば、パナソニックなどがそれを出す。
誰かのヒットがわからないと自分たちは身動きしないという、怠惰な幼稚思考。
家電領域において、本当にチャレンジ精神がないと言えます。正直、日本のメーカーは「猿真似から一歩も出ていません」です。
日本の家電の新製品というのは、私は「技術者のオナニー」と言っていますが、そんな改善しか出ず、チャレンジが殆ど見られないものばかりです。
さすがにソニーは、海外の猿真似をしている感じはしないので、ソニーにはもっと頑張ってほしいと思います。
それ以外の、多くのナショナルブランドの家電メーカーは、本当に残念です。
ゼロリスクはコストが掛かるだけ。進歩はない。
ちなみに、上記のSuicaの例がその典型なのですが、
猿真似は、はっきり言って進歩はありません。そして相手をクリエイティビティにおいて追い越すことは絶対にありません。
なぜなら、チャレンジした側は、継続してチャレンジを続けるので、やっと追いついたと思ったら、すでに先に行っています。
そして、社会人をやっていれば本当によくわかりますが、「答えがある仕事」と「答えがない仕事」は、本当に別物です。
「答えがある仕事」をずっとやってきた人が、「答えのない仕事」をいきなり出来るようになのは不可能です。
「答えのない仕事」のなかで、コツを掴めるようになるまで、失敗を続けること以外に、「答えのない仕事」はできるようにならないのです。
そして猿真似は、高コストです。
なぜなら真似るべきものと品質を合わせに行こうとすると、確認作業が多すぎるからです。
自分たちがゼロから作ったものであれば、テストの勘所もわかるのですが、真似して作ったものは、それが分かりません。
だから、といえば言い過ぎでしょうが、三菱重工がジェット旅客機をなかなか完成できないのは、こういうところにもあるのではないかと思います。
進歩とはリスクヘッジしながらするものである
上記でも書きましたが、進歩とは「答えのない仕事」の積み重ねだと思います。
私はIT業界でプロダクトマネジメントや、プロジェクトマネジメントをしているので分かりますが、
リスクヘッジ、つまりは失敗しても小さく、問題が起きても回避ルートを準備しながら物事を進めることを身に着けると、チームや、サービスが、確実に少しずつ進歩していきます。
しかしながら、まわりを見渡すと、大きく失敗ばかりして、小さくて簡単な案件で失敗がないかのどちらかです。
ここでもゼロイチを見るのです。
つまりは、思考がそうなっているから、現実の仕事においてもそうなる、というわけです。
そして、大きく失敗したら、「もうやらない」か「ガチガチの杓子定規な進め方に戻す(=進歩しない)」といった具合で、いっこうに進歩する気配がありません。
私は、これと同じことが、日本のいたるところで発生しているという気がしてなりません。
ここに、自戒も込めて、自分の意見を残しておきたいと思います。