記憶の糸
宮崎市定という偉い学者の本のなかに、

貧しい農家の青年が、小学生を出たあと独学で数学の研究をし、10年後に「大発見をした」と言って持ってきたのが、2次方程式の解の公式だった。

という逸話があるそうです。

これ、最近の仕事上でよく出会う「ゼロベース思考」を振り回してるビジネス書をかじった人にあてはまると思えて仕方がないです。

Webサービスを作るときに、既存のサービスを参考にして作ればいいものを、変に自分たちの頭で考えるみたいなことに拘って、出来上がりつつあるものを見ると、サービスとして穴だらけで、途中で軌道修正したことがあります。

結局、未踏の領域と確立された領域とを分けたうえで、確立された領域を、わざわざ自分の頭で考え直す必要はないのです。

そして未踏の領域にこそ「ゼロベース」で臨まなければならないのです。しかも、未踏の領域より手前は知っていることを前提として。

つまりは、既存のアプローチではどうしようもないからこそ、ゼロベースで考えてみる価値があるのであって、既存のアプローチをろくに知らない人がゼロベースとやらで考えて、結果として、既存のアプローチと同じ水準になればまだよし、それ以下のものしか出てこないということが殆どだと思います。

なぜと言って、既存のアプローチは、時間の試練に耐えた、それなりに洗練されたものでもあるからです。

確立された領域で真似てばかりいるのは進歩がなくて愚かと言えますが、なにも知らずにゼロベースで考えて、自分が進歩したと思ったら世間以下というのも、同様に愚かです。

こんな当たり前のことも、流行のビジネス本に乗せられて分からなくなっている人がいるとしたら、そんな連中は、可能であれば意思決定のメンバーから外すか、自分が抜けるのが望ましいと思います。

決定するまで時間がかかり過ぎるのと、その時間がかかってる理由が馬鹿らしくてストレスがたまるからです。

-----

おすすめの記事