記憶の糸
大企業は独創的な新製品・新サービスを生まない、というのはよく言われることです。

それを身に染みて感じている今日この頃です。

理由は単純で、大企業になると、企画を通すのに「数字」で上を納得させる必要があります。

で、当然のことながら、「数字」があるのは、この世に既に存在するものです。この世に存在しないものでは「数字」を出しようがありません。

通常、企画のプロセスは、

アイデアありき

マーケット調査(ニーズの調査)

企画案をまとめる

審査・承認

事業化

となるわけですが、この「審査・承認」部分で、たとえばマーケット調査結果、特に定性的な調査結果を拠り所とする場合、審査する人が、その分野の土地勘とでも呼ぶべきものがなければ、当然詳細な説明を求められます。

詳細な説明とはなにかと言えば、いうまでもなく「数字」を使った説明しかありません。「数字」こそが、人の感情に依存しない、純粋な説明のツールだからです。

ちなみに数字が必要とされるのは、以下の式です。

想定のターゲット数×獲得数×商品単価

この「想定ターゲット数」が、この世にない新製品・新サービスであれば、出せない。

いやまったく出せないわけではない。定性調査を丹念にやれば。

ただ、それには(特に大企業であれば)時間とパワーがかかる。

結果、そうこうしているうちに、経営者の直観が通るベンチャーかトップダウンのオーナー会社が新製品を出すことになる。

ちなみに大企業のなかには、独創的なモノを出そうとして様々な機会(社内ベンチャー制度や、コンテストなど)を設ける。

が、この機会をパスする審査に、数字による説明/判断基準が組み込まれていたとしたら・・・

そもそも独創的なモノなど出るはずのない「独創的なモノを生む機会」となっており、これを本末転倒というのだと思います。

ただ、自分が逆の立場で判断しなければならないとしたら、そこには意思決定者として自分以外もいるとしたら、、、

そう考えると、やはり数字による説明を求めざるを得ないでしょう。

つまりは、このように世に言う大企業が独創的な新製品の出せない状態、これは「良い」とか「悪い」とかではなく、もはや自然の摂理なのだと思います。

これは、どうしようもなく企業が辿る道なのだと思います。逃れられないことだと思います。大企業の宿命だと思います。

だからもし、日本発で新しいものを生み出そうとするなら、ベンチャーを保護する経済社会の基盤を整えるべきでしょう。

もしくは、オーナー企業に望みを託す以外にないでしょう。

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