イソップ物語で、レンガ職人の逸話があります。
「あなたは何をしているのか」
A「レンガを積んでいます」
B「レンガで壁を作るんです」
C「レンガで聖堂を造って、そこで多くの人が祝福を受けるのだ」
ビジネスパーソンに求められる考え方は、いうまでもなくCです。Cであるということは、自分の付加価値がなんであるかを押さえているということです。
ゆったりした椅子が買いたい人は、椅子が欲しいのではなく、くつろぎを求めているのだ。そういう視点から出発する人は、自分の仕事が「椅子を売っていることだ」などとは言わないと思います。
そしてまた、提案する椅子は、顧客を満足させるものになるでしょう。
この譬えを、システムの運用・保守に当てはめるならどうなるでしょうか。つまり、本当の付加価値とは。
A「運用保守をしています」
B「サービスの継続を維持してます」
C「サービスを継続しつつ、利益を高めています」
となるでしょう。
なぜなら、経営はつきつめれば、利益の増大が目的であり、利益=売上-コストである以上、「売上増」「コスト減」は同じ重要度の仕事だからです。
この「コスト減」を実現するのが、運用保守に他なりません。
売上増の方が確かに華々しい仕事でしょう。とはいえ、地味な運用保守=コスト削減がもたらす経営上の価値は、売上増と同じなのです。
だから売上を追求している会社よりも、コストコントロールをしながら高い利益率で、ゆっくりでも業績を拡大させている会社の方が、強いということになります。
このことを理解しない組織は、運用保守(コスト削減)が疎かとなり、景気循環の波が業績に与えるインパクトは大きなものになるでしょう。
のみならず、早晩、高コスト体質から逃れられなくなり、給与削減、福利厚生の削減や、人員の削減といった方策を採らざるを得なくなってしまうのではないでしょうか。
私がITコンサルタントとしてコスト削減を担当した領域は、そんな運用保守の領域でした。