私が今いる会社は、医療のビッグデータを持っているのですが、
このデータをそのまま販売する以外に、サービスに仕立てて提供することで収益を得ようと、ビジネスモデルを転換しようと模索しています。
そんななかで、「手持ちのデータから何ができるか」を発想すると、なかなかアイデアが広がりません。
そんなところで苦しんでいる状況なので、発想を切り替えるために、似たような構造を持っていた企業がどのように成長したのかを読み解いてみて、
そこから出てきたレシピを、自社に当てはめて発想を広げてみようという話になりました。
で、私は、もともとモノである花札を売っていた任天堂が、どのようにして今の位置(2021年現在は、Nintendo Switchがヒット継続中)にいるのかを、『任天堂 "驚き"を生む方程式』という本を読んで探ることにしました。
目次
任天堂の歴史を振り返ると
任天堂の歴史をあまりちゃんと知らなかったのですが、花札からざっくり書くとこのようになっています。
花札
↓
プラスチック製トランプ
↓
ウルトラハンド/ウルトラマシン
↓
ゲームウォッチ → → → → →
↓ ↓
ファミコン ゲームボーイ
↓ ↓
スーパーファミコン ↓
↓ ゲームボーイアドバンス
64 ↓
↓ ↓
ゲームキューブ ニンテンドーDS
↓ ↓
Wii ↓
↓ ↓
→ → → → 合流 ← ← ← ←
↓
Nintendo Switch
私は、ファミコン~ゲームボーイ~スーパーファミコンで ゲームから遠くなってしまったので、その後の DSや Wii は、CMで見るくらいでしたが、
いまの Nintendo Switch が、DS と Wii の合流形態であることは、少なくない驚きでした。
そしてここに至る判断ポイントがいくつかあって、それが、自分たちの企画の仕方にも役立つことを学びました。
テクノロジー路線からの決別。そして「ゲーム人口拡大戦略へ」
任天堂は、スーパーファミコン以降で、ソニーがプレイステーションを出してきてから、しばらくテクノロジー路線に乗ります。
テクノロジー路線とは何かというと、CPUの性能向上に合わせて、グラフィックの向上とか、そちらを追求するという路線のことです。
そして、64・ゲームキューブで失敗します。
理由は、CPUの性能を活かしたゲーム開発をしようとすると、開発費が膨れ上がって、結果的にはゲームタイトル数が減る、ということにあります。
ゲームキューブの開発あたりから、このことを予見する人が任天堂のなかには既にいて、そして、ゲームキューブを境に路線を変更します。
その変更した路線というのが、
今までゲームをしたことがない人を取り込もう(ゲーム人口拡大戦略)
=家庭で嫌われないゲーム機になろう
というものです。そしてこの方針は、Wii・DSで実を結んでいます。
そして、「家庭で嫌われないゲーム機になろう」という考え方は、
「家族全員が関係あるゲーム機へ」という考え方に昇華されていきます。
だからWiiは、据え置き型ゲーム機として、まずは「お母さんに嫌われないようにしよう」ということで、
とても小さくてテレビの側に置いていても邪魔にならないサイズだったし、運動系のゲームが出てきたりしていました。
そしてポータビリティのあるDSと合流して、Nintendo Switchになりましたが、これは据え置きと持ち運びを両立しているものになっています。
そして大ヒットしています。
ちなみに、2022年1月時点でこの記事を書いていますが、ソニーの携帯ゲーム機であるプレイステーション・ポータブルは、PlayStation vita という機種を最後に生産終了になりました。
任天堂とソニーの考え方の違いの結果は、ここにも出ていると思います。
家族全員が関わるゲーム機とは何だ?=家族全員が関わる娯楽とは何だ?ということを愚直に志向する
上記の流れは、任天堂が、ハード屋ではなく、ハードも知っているソフト屋で、ソフトの本質を愚直に追究するスタンスから産まれたものだと言えます。
「マリオパーティ」シリーズから、「あつまれどうぶつの森」や、「やわらかあたま塾」のようなものを見ると、プレイステーションのゲーム群とは明らかに一線を隠しています。
「みんなが楽しめる」「家族が楽しめる」「お母さんも楽しめる」という要素を体現していると思います。
これが出てくる「企画の仕方」というものを私なりに考えてみると、
ゲームという平面のなかで発想していないということかと思います。
企画の思考を立体の三角形に例えると、一番高い頂点に「娯楽とは何か」を置きます。
その頂点が見渡しているのは、「人間生活のすべて」ということだと思います。
なぜなら、「娯楽」とは「人間生活のすべて」のなかに差し込まれるものだからです。
その「人間生活のすべて」を見渡したときに見つかった「娯楽」が入れる隙間に、ゲームという角度から具体化させる。
こういった企画の仕方をするから、脳トレが出るし、あつもりが出る。そんな気がします。
任天堂の「企画の仕方」のまとめ
というわけで、任天堂の企画の仕方から学べるのは、
平面で思考しない。立体で思考する。そして大事だと思ったのが、
その思考の立体三角形の頂点に何を置くか、ということをよくよく考えている。
なのだと思いました。
私に置き換えると、「医療データで何が出来るか?」という積み上げ方式で発想してはだめで、
「医療に求められていることはなんだ?」や、もう一段抽象化して「健康であるために出来ることってなんだ?」あたりを三角形の頂点に置かなければならないと思います。
そしてもちろん、「健康のために何かをする」のか、という切り口でテーマ設定をする場合と、
「何かをすると結果的に健康になる、その何かとはなんだ?」という切り口でテーマを置く場合とでは、また発想の範囲や角度はまったく変わってくると言えましょう。
このあたりをグルグル回り、行ったり来たりをしながら試行錯誤をしなければならないのだろうと思います。
ということもあり、大変学び多き任天堂でした。ありがとうございました。