記憶の糸

今年の夏に向けて、節電が声高に叫ばれています。

もちろん、それは正しいと思います。

全体の電力消費量を下げて、ピーク時の供給電力量を超えないようにする必要があるためです。このパターンの停電が起きた場合、大停電となり、都市部は大混乱に陥るからです。

が、かといって、この「ピーク時の」という部分を忘れて、節電が一人歩きするのは違うと思います。

日本では、この手の掛け声がまことに一人歩きしやすいと思います。

仕事場における「窓際の席は電気を消しましょう」で正しいのですが、曇りの日でも窓際の席の電気を消すのは違います。

もう少し言うと、電力の供給量が需要に追いつかなくなりそうなときにそうすべきなのですが、今のような涼しい時期で、温度調整のために電力がそれほど使われない時期に、そのようにする必要はないのです。

繁華街の店舗にしても同様です。

今の時期から、看板の電気やエアコンを切る必要はないのです。いっぱい電気を消費すればよいのです。

東京電力の供給量に対して、需要量が危なくない範囲で高水準であるとき、最もエネルギーを効率良く使えている状態なのですから。

※※※

節電の目的は、東電の「最大供給量」を超えそうなときに、工夫して消費電力を抑え、大停電を阻止することにあります。これがそもそもの目的です。

たまたまテレビを見ていましたが、枝野官房長官のVTRから始まる構成で、待機電力を抑える商品を紹介していました。

内容としては、夜間の待機電力を抑えることで、1ヶ月に○○円の節約になる・・・というものでした。

が、夜間の消費電力を抑えても、それはそもそも大停電阻止の節電活動とは何の関係もないことです。

いや、効果のないどころか、害悪でさえあります。

視聴者が、自分は節電に協力しているなどと思い込んで、「ピーク時に抑える」ということを忘れたら最期です。

下の図の2007年8月の夜間電力消費量を見ると、現時点の供給量(約4000万KW)を下回っていることが分かります。

このことから、夏場の夜間でさえ、節電する必要がないと言えるかもしれません。

もちろん、発電の種類から分かるように、原子力発電の供給量が減っているため、確証が取れている判断とはなりませんが。

2011年5月の電力使用状況:http://www.tepco.co.jp/forecast/index-j.html

2007年8月の使用状況:http://www.jcma.jp/kankei/pdf/setsuden080709.pdf

目的を正しく捉えていない節電活動は、経済活動を停滞させることでしょう。のみならず、個々人の生活にも無用の圧力がかかることと思います。

この点、東電や政府が何か情報提供してくれるかと言えばそれはないと思います。

彼らは最悪のシナリオにならないようにしか手を打たないからです。

この点、個々人の判断が必要になってくると思われます。

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