記憶の糸

食品のPB(プライベートブランド)販売の拡大は、食文化の停滞を招くのではないか。

最近のコンビニ内のPB(プライベートブランド)の品揃えを見ると、そういう危機感を抱きました。

食品メーカーは、消費者の利便性や嗜好を考えて、いかに新しい食品を生み出すか知恵を絞っていて、結果的にそれが、食品分野における技術イノベーションを生み出すことにつながる。

(参考:食品開発の進歩の歴史

が、PBは、売れるからそれに合わせて作っているだけです。

ためしにコンビニに行ってみれば、キューピーマヨネーズの隣に、殆ど同じ形状で、PBのマヨネーズが置いてある。しかも安い値段で。

これは模倣以外の何物でもないといった状態です。そして「模倣」は言うまでもなく研究投資は必要ありません。なぜなら、売れるものを真似すればいいだけなのですから。

そしてその研究開発費がいらない分、低コストで生産・調達できて、高い利益率で商売ができるというわけです。

で、それによって何が起こるかというと、メーカーの収益の圧迫(=研究費の圧迫)による、食品開発の進歩の停滞、ということになるのではないかと思います。

そしてついでに言うなら、物価の一層の低価格化(デフレ)をも加速させることになりましょう。

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売れるものを創造するというスタイルは、創意工夫を重ねるが故に、その領域におけるイノベーションも起こり得るが、売れるものに合わせて作るというスタイルでは、イノベーションは起きない。

前者をプロダクトアウトといい、後者をマーケットインといいます。

そして今日のプロダクトアウトは、消費者の生活スタイルや嗜好性に合わせて開発をするという、マーケットイン的な要素も併せ持った、いわば二足のわらじ状態です。

が、PBに見るマーケットインではその片鱗は見られない。いや、マーケットインでさえない。

なぜなら、言葉の意味のマーケットインは、市場のニーズを発掘し商品を企画開発をする。が、コンビニ・スーパーのやり方は、企画開発すらしていない。ただ、日々の販売データから売れ筋のものを選んで、それをより低コストで模倣し、生産しているのみだから。

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おそらく食品メーカーは、コンビニやスーパーに文句は言えないと思う。売り場を握られているから。

が、それで食品技術の開発力が日本として衰退を招くのであれば、それは業界や企業活動という枠を超えた、ひとつの危機だと思う。加工食品の開発が、おそらくは今後の人口減社会の中でも重要な技術になってくると思うから。

私は、コンビニ・スーパーはPBと称して、食品メーカーの競争力を削ぐようなことはすべきではないと思う。せめて、食品メーカーが進出していないような分野での商品開発に勤しんではどうかと思う。

たとえば、セブンイレブンでは、米を使ったクッキーというような商品があった。そういう領域で、独自の商品ジャンルを確立していくべきだと思う。

他人様の努力の上に胡坐をかくスタイルは、食品メーカーにとってはもちろん迷惑千万だが、長期的に見れば、日本という小資源の国にとっても良くない。

そんなことを考えながら、食品メーカーのものとPBを買い分けようと思う今日この頃でした。

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最後に代表的な食品メーカーの経営理念のページへのリンクを貼っておきたいと思います。
日清食品味の素カゴメハウス食品マルハニチロ食品

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