外国の表面的な情報で比較する「思考の癖」はそろそろやめてほしい 『フランスの有休消化率が100%』

この手の記事は本当に非生産的で、バランス感覚に欠ける未熟な日本人層を扇動します。

要約すれば、

フランスの有休取得率が100%なのは、国民に認められた権利を行使しているからであり、その「権利の行使」ということについて、フランス国民は、革命からの伝統で持っているので、日本人ももっと「権利の行使」をすべし。

というものです。

この記事を読んで思うことは、他人の現実から出発しても全然意味がないということです。

個人と組織文化のバランスは崩せない

フランス人の、権利と義務を勝ち取る姿勢を学べといっても、日本人個人がそんなことはできません。

社会人をしていたら分かると思いますが、我々は、「個人」と「組織の文化」との「バランス」のなかに生きています。

権利を確実に行使することで、組織の文化との著しい不整合を起こすと思われる現場では、個人の行動は制約されます。

そのバランスのなかで適切な行動をとることが求められますし、それが成熟した振る舞いでありましょう。

そんなバランスをとる必要はない、という人がいたとします。

たとえば、その人は、あるプロジェクトで重要な案件に責任者として関わっているとして、そのサービスイン当日に、自分の「夏休み」だからといって有休をとれるものでしょうか。

取れないと思いますし、そんなことをすれば、その組織として、以降、統制がきかなかくなって滅茶苦茶になるでしょう。

自分たちの上に立つ人がそんな振る舞いをするのだから。

総合職では長期休暇は取れない

それから日本国内でも、外資企業では有休がとりやすかったり、プロジェクトが終わったあとの長期休暇の話を耳にしたことがある人は多いと思います。

これ、そもそも有休がとりやすい「組織文化」とは関係なく、海外の仕事の組み立て方は、基本的に分業です。

業務の部品化です。

だから転職もしやすいのです。なぜなら、「人」を業務をこなす「部品」と扱うからです。また対象の業務も「部品化」されています。

西洋の考え方・物事の進め方は「分業化」です。

部品だから取り換え可能です。

そういう現実のなかに生きている。。。

一方で、日本では「総合」です。「分業」という考え方が薄い。

総合職で、なんでも業務をかかえるから、休める期間がない。交代がきかない。会社で「仕事が出来る人」は、一般的に仕事を幾つも抱えている。

幅広い業務にも精通しているから、その人無しでは動かない業務がいくつかある。

結果的に、長期間、抜けることができない。

私は、これも、日本の「有休を取りにくい」原因の相当なウェイトを占めていると思います。

自分たちの現実から出た課題を考える頭がない

というわけで、「権利の行使の徹底」みたいな、日本でそんなことを言っても混乱があるのみであろう、他人の現実から出発して、安っぽい比較をするのはやめてほしいです。

自分たちの現実から出発すべきで、フランスというくくりで、安易な取れる情報を持ってくるのではなくて、

日本企業のなかで、有休取得率が高い企業と低い企業を比較して、

・高いと低いで、業種業態から働き方、企業文化まで含めて、何がどう違うのか

・日本の雇用の総合職的な働き方では、有休取得率100%で出来るのか

・出来ないなら、その理由はなにか。社会を巻き込んで議論すべき課題はなにか。

ということをメディアとして情報発信してもらいたいと思います。

他人の現実の情報を引っ張ってきて失敗するのは、

成果主義ブーム(1990年代)だったり、コンサルブーム(2000年代)だったりで、意味がないことはもうハッキリしています。

メディアの記者は、もっと足使え、頭使え、社会に対して意味のある課題設定に時間使え、と思います。

そこらへんに転がってる、いかにも即席で、記者自身の頭を使う必要のなっさそうなネタばかり拾いあがてこないほしいと思います。

それから最後に、フランスは、農業国家であり、ヨーロッパのなかではドイツにおんぶにだっこの国です。日本はドイツよりも経済規模は上です。日本との比較対象として、なぜフランスなのかも理解できません。

ドイツかアメリカとすべきでしょう。

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