未来への投資 ≠ 70歳以上の老人のスマホ講習 by 総務省

総務省が音頭をとって税金を使って、70歳以上の老人にスマホ講習会をするらしいです。

@2021年5月19日頃 産経新聞 朝刊
記憶の糸_産経新聞

その目的は"デジタル格差の解消が重要な課題"とのこと。

そこでどうしても違和感があるのが、税金を使ってまで老人にスマホ講習をする必要があるのか、ということです。

記事中の調査によると、70歳以上で、スマホを「ときどき使う」までを含めた「使う人の割合」は 41%です。

お年寄りの、目も疲れやすかったり、今までのアナログの生活で慣れている人のことを考えると、この割合くらいで十分ではないかと思うのと、

国家事業として税金を使ってまで、その底上げをする必要があるのかどうか、ということです。

初年度は 9億3千万円の予算を充てるらしいですが、その後は増やしていくようです。

老人がスマホを使えないことが何が問題なのか

ちなみに、そもそも老人がスマホを使えないことに何が問題なのでしょうか?生活を妨げる致命的な問題があるのでしょうか。

「あったら便利」「なかったら不便」というレイヤーからどうしても彫り下がらないです。

現にいま、その状態で元気に生活をしている70歳以上が生きていて、スマホが使えていないから致命的に困っているのでしょうか。

総務省のスマホ講習の意図は、図の「応用」に記載のあることが達成されることにあると言っていいと思いますが、これとて、

・マイナンバーカードの申請・利用
→ 70歳以上がスマホでこれを出来たほうがいいメリットが分からない。平日に時間があるのだから役所に行けば?
・マイナンバーカードの健康保険証利用など
→ スマホで出来るのは紐付け処理だろうけど、スマホでやらなければいけない理由はない。そして昨今の申請系の行政システムの品質が悪すぎることからすると、たぶん出来ない。結果、役所に行く。
・マイナポイントの申し込み
→ ポイント利用しないヒトには意味のないこと。このポイントの向こうの民間企業のポイントに交換しないと使えないポイントだが、本当にお年寄りに必要ですか?
・e-Taxの利用
→ 70歳以上のヒトのなかに確定申告をしなければいけないヒトってどれくらいいるのですか?というか、あんな細かな入力作業は、スマホではなくて大画面のPCでやるべき。
・医療機関のオンライン予約・診療
→ スマホ講習に来れる老人が、オンライン診療に頼らなければならないことはないでしょう。

総じて言うと「これらって生活するうえで深刻な影響をもたらしますか?もたらしたとしても、それは全体の何%ですか?」というと、まったくもって問題にならないと思います。

これは現役世代ですらそうです。

マイナンバーカードやマイナポイントと関係なく生活している人は相当多いことでしょう。

マイナンバーカードの所持率が、2021年4月1日時点で、人口に対する交付枚数率は全国で28.3%。70歳以上に限定してみると70歳~74歳の36%を上限 としてあとは下降していきます。

↑これが最大母数です。この母数に対して、「本当に必要な人」の割合を掛けると、相当に少ない対象者になると思います。

老人が民間サービスを使い出すことで新たに起きる問題

そして記事には、副次的に民間サービスの利用も広がると書いてありますが、

70歳にもなってスマホで初めてネットサービスを利用し出す人たちは新たな問題を引き起こすでしょう。

推測とはなりますが、

直接的なことであれば、取引上のトラブル(注文やめたいとか、注文した覚えない)や、あとは70歳以上は、団塊の世代で、最も自分勝手な世代なので、クレームは激しいでしょう。

間接的なこととしては、オンライン上の詐欺にはどんどん引っ掛かることでしょう。「クリックしてと言われたからクリックしたら高額請求がきた」とか。

こんなことが起きると容易に想像できます。

だとすると、スマホ講習をやる必要性なんて1ミリもありません。

ひょっとすると、このスマホ講習は "予算消化"や、"選挙対策"といったところなのではないかとも思ってしまいます。

もしそうでなければ、この施策を立案した政治家か官僚はアホです。

国家予算は未来への投資(子供たちへの投資)に使ってほしい

ちなみに、ここまでは目的とか課題という観点から書きましたが、

大前提として、70歳以上ということは、平均寿命まであと15年ほどということも忘れてはいけません。

その人たちに国家事業として投資をするのは投資対効果があまりに悪い。というか平均的に15年後にその投資に対する効果はゼロになります。

国家事業には "国家百年の計"という言葉ありますが、このスマホ講習施策は、長期スパンで物事を考える頭脳が完全に欠落していると言えます。

せめて都道府県レベルがこれをするならまだ分かります。国政レベルでこれをするのは、だから立案者はアホだと思うのです。

こんな馬鹿げたことをするくらいなら、未来のある子どもたちのスマホ環境を整えることに税金を使ってほしいです。

たとえば、いまその問題が顕在化しつつある、

・幼児に対して、スマホ利用による目や脳や知能への影響

・学校の教材を、紙からデジタル(タブレット)へシフトさせて起きる記憶力の変化

・スマホ利用する側ではなくて、スマホを生み出す土壌ができるような教育制度整理(飛び級とか)

といったようなことの調査や整備に国家の税金を使ってもらえないものかと思います。

これこそ次の世代のことを考えた "国家百年"に資する施策ではないでしょうか。

子を持つ親としては、この老人向けの施策は、未来への投資という観点からすると、あまりに馬鹿げていると思いましたので、その記録をここに留めたいと思います。

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