日経新聞のTPP擁護は悪質といえる内容

本日の日経新聞朝刊で、「TPP 日本に利点多く」という記事がありました。(http://s.nikkei.com/vraXoV

ここでは、21の分野について、日本のメリットと議論になりそうな点をまとめていました。

この記事が悪質だと思った点は、

1)そのまとめの内容の「日本のメリット」が実はそのまま加盟国のメリットになるという点が完全に触れられていない点と、
2)日本の貿易コストの大小比較の仕方が悪質な騙しである点です。

1自由競争の負の面がなにも考えられていない

例えば、電気通信サービス分野では、メリットの記述しかなく「通信事業者の国際取引が容易に」とあるのですが、それはそのまま、加盟国もそうだ、ということです。

TPPを締結したのだから、通信業界に外国資本を入れよと、アメリカが政治的に外交で攻めてくることは十二分に考えられます。

自由競争の実際はそういうことです。純粋なる企業努力間の競争になるというのは妄想です。

歴史的に見て、そうやってアメリカは自国の産業を保護してきていますし、そのためには保護主義になり、攻勢に出るときには、政治的な圧力をかけてもきます。企業の競争の背後には、国家の影が必ずあります。

日本におけるインフラの輸出についても、民だけでは他の国に勝てないと分かったからこそ、官民が一体となって途上国に売り込みに行っているのではないのでしょうか。

そうした事実を無視して「国際取引が容易になる」などと、一面のみの記述であっていいはずがないと思います。

2日本の貿易コストの大小比較の仕方が悪質な騙しである

記事の内容もお粗末です。貿易の円滑化の恩恵は大企業だけではないか、と設定された質問に対して、「中小企業に好影響が広がる可能性がある」という書き方だし、

貿易手続きの日本のコストは182カ国中24位としてシンガポールと比較していますが、シンガポールのような都市国家と日本とでは、そもそもの比較していいのかさえ疑問です。

ちなみにアメリカは、日本よりも輸出・輸入ともコストがかかっていますが、それには触れていません。それは右のサイトで確認できます。(http://www.globalnote.jp/

TPP加盟予定国で、日本にもっとも近い産業力を持つ国はアメリカです。比較するならアメリカとすべきであり、シンガポールのような産業構造もぜんぜん異なるような国と比較すべきではありません。

こうした比較の仕方は、統計でウソをつく典型的なやり方です。比較の前提も条件も何も出さずに、単純な数字の大小だけを評価するやり方は、都合の悪い情報は出さないときの常套手段です。

このような情報を載せてくる日経新聞のTPP擁護には、納得できるはずがありません。

※※※

上記のようなことを踏まえて思うこととしては、

TPPへの加盟で、国内の産業がすぐに崩壊することはあり得ないことは私も思いますが、競争にさらされることで負ける分野が必ず出てくることと思います。

それが何を意味するかといえば、雇用の喪失を意味します。

雇用の喪失が何を意味するかといえば、社会不安など諸々あるでしょうが、結局は新たな国内での雇用創出がないのであれば、国力は確実に衰退していくということです。

議論すべき評価軸としては、国内産業の毀損と、新たなマーケットの誕生の差し引きで、国内的にどうだ、という点なのではないでしょうか。

TPPの議論は、この点について議論されるべきで、それがなされていないのであれば、参加は見送るべきだと思います。

※※※

ちなみにそういう議論がなされていない、もしくはいかに浅薄かという事実として、

TPPに参加すれば、GDPが2.7兆円押し上げられるということを盾に、TPPを擁護しようとした人がいました。

が、これは10年の累積だそうです。1年あたりは2700億円です。ちなみに日本の年間GDPは530兆円ですから、兆で見ると、2700億という数字は0.27兆円です。これは年間GDPの、
0.05%です。

これを押し上げると言えるのでしょうか。

GDPを押し上げるとしてTPPを擁護した人たちは、
2.7兆円という数字の大きさは強調したけれども、「10年間」ということも「530兆」ということも伏せていました。それがフジテレビです。

今時点でのTPPの擁護には何か胡散臭さを感じます。

見切り発車の参加で、日本の国力への悪影響がないことを切に願います。そして、少なくとも今時点でのTPP参加については、私は反対を表明したいと思います。

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