海洋の経済大国の外交術 ~ヴェネツィア共和国の歴史に学ぶ3~

イタリアの海洋国家、それは、ピサ・アマルフィ・ジェノバ・ヴェネツィアがあったようです。

ピサ・アマルフィは早々に歴史上から退散しました。そしてジェノバ・ヴェネツィアが直接に対決するようになりました。

ようやく争いが集結した後にヴェネツィアに待っていたのは、大陸国家・トルコとの対決でした。

その中で、海洋国家たちの衰退の要因と、衰退しなかったヴェネツィアの振る舞い(外交)をまとめて行きたいと思います。

海洋国家の衰退の要因

・世界レベルでの商機に乗らなければ、衰退し、消え去る

→アマルフィ。第四次十字軍(コンスタンティノープルの商圏拡大)に乗れなかった。

・弱みに対して攻撃されれば持ち堪えられない。弱みを攻撃されるような口実を周囲に与えてはいけない。

→ピサ。陸地面積の圧倒的に小さな海洋国家が、内陸国家であるフィレンツェに攻撃の口実を与えてしまった。

・疲弊したときに、すぐに立ち直るような体制にしておかなければならない。

→ジェノバ。ヴェネツィアとの対立・戦争の果てに、国を挙げてその疲弊から回復できなかった。統制のとれた組織(ヴェネツィア)の方が、バラバラの活力ある個人に任せる(ジェノバ)よりも、共同体の回復力は勝る。

大陸国家との対決

・関係国との関係は、包囲されないように立ち回る必要がある。

→四方八方を敵に回すと、四方八方に警戒しなければならず、手が回らずに一点突破されるリスクが高まる。

・交易で生計を立てている国家は、交易が成立する関係を、どこかでは常に確保し続けなければならない。

→ある国と戦争状態(究極の支出)になっても、それを支えたり長引かせるだけの収入を維持しなければならない。

・戦争では、明確なゴールを絶対に定めなければならない。

→ヴェネツィアの場合は「商圏の保証」が戦争目的。これを勝ち取れば戦争終結。なければ、極力妥協しない。

・いかに少人数で戦える機能(軍艦)を追求しても、物量(トルコの陸軍兵力は、ヴェネツィアの全人口に匹敵する)には負ける。

→どれだけ経済力があって最新技術を持っていても、量には負けるということを肝に銘じておいた方がよさそう。日本にとっての中国。

・話し合いとは、同じ価値観を共有する者同士(vs ジェノバ ― キリスト教かつ海洋国家)で成立するものであり、そうでなければ成立しない。(vs トルコ ― イスラム教かつ大陸国家)

→経済的条件で折り合いがつくのは、同じような価値観・状態の者同士のみ。領土拡張を目的にしている国には、その切り口では折り合いがつかないし、つけてもすぐに破棄してくる。

・価値観の異なる者の行為を、自分たちの価値観ならこうする、という判断の元、推測するのは間違い。予想だにしない行為にでる。

→経済的条件で折り合いがつくと思って進めた講和は、殆どうまくいかなかったようである。(vsトルコ)

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