夫婦別姓に社会コストを掛けるより 子供の教育環境とかに コストを掛けてほしい

2021年6月、「夫婦別姓が認められないのは違憲であるか」ということについて最高裁の判決が出たようです。結果は「合憲」です。

把握できていなかったのですが、2015年にも最高裁の判決があったようです。これも「合憲」のようです。

この結果に対して、とあるニュースでは以下のような内容がありました。

Yahooニュース「違憲」信じ、夫婦で書いた婚姻届 「あと何年かかる」

 今回、夫婦別姓での婚姻届の受理を申し立てた東京都の40代女性は、最高裁の決定書を受け取った後の会見に、婚姻届を持って臨んだ。違憲判断が出れば役所に提出しようと夫と相談して準備し、婚姻後の名字の欄には「夫」「妻」の両方にチェックを入れた。  

互いを尊重し、それぞれの姓を名乗りたいと事実婚を選んだが、結果は2015年の最高裁判決と変わらなかった。女性は「裁判所は個人の権利に真摯(しんし)に向き合わない」と声を詰まらせた。  

夫婦には小学生の子どもがいる。会見に同席した夫は「子どもたちに選択肢を作るのが私たちの役割。裁判で時代を変えられると思ったが、あと何年かかるのだろうか」と憤った。

この記事に対してコメントで、目に留まった意見として、以下のようなものがあったのですが、

・司法府に働きかけることではなくて、立法府に働きかけることなのでは?

・合憲判断が出たとて、法整備や仕組みを整える必要があるからすぐには何も変わらない

・姓が変わることすら受け入れられないなら、別に結婚しなくてよい。結婚するとそんな小さなこと以上にたくさんの問題と向き合うことになるのだから。

・この子供が婚外子扱いで可哀そう。

・昨今の女子職員は結婚した後も、独身時代の姓を使っているから、戸籍上、別姓にしなくても不都合はなさそうだ。

・選択的夫婦別姓の話が出ると 必ず世界中で日本くらいとか日本は遅れているとかいわれるけど 他国は夫婦別姓可とかミドルネームとか その国古来自然にそれだったはず 日本は同姓が自然 他国は他国、日本は日本

そのとおりだと私も思います。

で、そのなかでも、「法整備や仕組みを整える必要がある」というところで、IT業界にずっと在籍している身として連想したのが、

この選択的夫婦別姓に対応する仕組み変更を、構築・定着させる社会的コストは、天文学的な税金が投入されることになるだろうな、とも思ったのでした。

夫婦同姓であることに不満な人たちの支払うコスト合計は まだ小さい状態でしょう

この夫婦別姓のことで、サイボウズの社長の主張だと、コストがかかるとか 生産性が落ちるとか言っていますが、

外部ブログ強制的夫婦同姓のここがダメ!

違憲となって、選択的夫婦別姓を認めた社会制度づくりとなると、社会全体として、この人達の生産性が落ちた分と比べたら、比較にならないコストがかかると思います。

データを変更するのは簡単だ、と言っていますが、それはそのとおりだと思います。

が、その上に乗っているソフトな部分(ITシステムから、制度といったもっとソフトなものまですべて)を考慮すると、天文学的なコストがかかると思います。そしてその大部分は税金が投入されることでしょう。

そんなことに税金を使うくらいなら、私は、子供を持つ身ですが、子どもたちの教育環境を整えに行くとか、幼い存在が成長するなかでの未来に期待を持てるようなことに税金を使ってもらいたいものだと思います。

はっきり言って、納税者として、そんなことに税金とか、この国のパワーを使って欲しく無いという感想です。

社会制度はあなたのためにだけ存在しているのではない。最大多数のために存在しているのである。

それから、ニュース記事のなかには、こんな記述もありましたが、

 もう1組の申立人の40代夫婦は昨年、新型コロナウイルスに対応する緊急事態宣言が出た際、やむなく同姓での婚姻届を用意した。

もし感染して重篤な症状になっても、医療行為に対する家族の同意書が事実婚では有効とされない不安があった。そんな心配をしなくていい結果を期待したが、かなわなかった。妻は「いろんな家族の形を認めてほしい」と訴えた

やはり、あたなの希望のために、それをすると多大なコストが発生するなら、自分が納めてる税金は、そこには使ってほしくないと思うのが正直な感想です。

社会は、近くから見れば個人のために存在しているように見えますが、遠くから見れば、最大多数のために存在しています。

別姓を希望する人が最大多数とは到底思えません。それに、優先順位的に、そこの優先度は高いですか?と思います。

当事者の側から見ると「いろんな家族の形を認めてほしい」かもしれませんが、社会の側(当事者以外)から見ると、ひとまず最大多数がうまくまわる家族の形があればよいです。

社会制度を変えるレベルで物事を考えるならば、

個人と社会、部分と全体のバランス点がどこか、という視点が不可欠だと思いますが、少なくとも、夫婦別姓を必要(=望んでいるレベルよりも上)とする「部分」を、「全体」は必要としていない、とうことだと思います。

卑近な仕事場の組織で考えてみてもいいと思います。

部分的な個人の提案は、それがたとえ理にかなったものであっても、必要とする人が極端に少なければ、全体として採用することはありえません。しかも、それによってコストがかかってくるなら尚更です。

夫婦同姓がNGな理由(サイボウズ社長 青野氏)もちょっとヒドイ

それから、ふたたび前回のブログで引用している、サイボウズ社長の青野氏のブログ、これを改めて読んでみたのですが、ダメ!としている理由はちょっと笑えないくらい雑な部分があると思います。

外部ブログ強制的夫婦同姓のここがダメ!

強制的に改正される精神的苦痛

その名字と名前のセットは、子供の頃から数多くの体験とともに、本人にとって意味深いものになっていきます。その事実を無視し、強制的に改姓させることは大きな精神的苦痛を生むことがあります。

先日、私が生まれたときの命名書が出てきました。姓名判断では「青野慶久 37画、終生安泰であり...」と書いてありました。総画数が変わってしまった私は、終生安泰でいられるのでしょうか。

これって、前半部分は、別姓になると一体感がなくなるとか言ってるのと同じ次元のことですよね。ご本人の感想でしかないと思います。

しかも旧姓が「西端」という姓で、比較的めずらしい苗字なので「意味深いもの」なのでしょうが、「田中」とか「鈴木」に意味深いものを感じている人は、はたしてどれだけいることか。

後半部分って、占いの領域に近いことですよね?それって理由になりますか?

改姓の手続きにかかる費用

健康保険証、パスポート、免許証、銀行口座、クレジットカード、マイレージカード、病院の診察券まで、所持しているカードはほぼすべてについて氏名を変更する手続きが必要です。また、銀行などで使う印鑑も作り直す必要があります。

望まない改姓手続きのために、市役所に行って住民票を取ったり、休みを取って銀行に行ったり、免許センターに行ったり、氏名変更の書類を用意して送ったり。それは改姓した本人だけでなく、それぞれの窓口の人たちや会社の総務部門の人たちの時間を奪い、価値を生まない仕事に従事させていることになります。この人手不足の時代に、なんと生産性の低い社会でしょう。働き方改革的にもNGです。

これはオンライン化していないことが問題なのであって、改姓が問題なのではないと思います。そして後半部分は、既存の社会体制を維持するという価値があると思います。

ご自身が気に入らない社会制度の維持につかう時間がすべて「価値を生まない」のだとするのは乱暴だと思います。

「価値を生まない仕事に従事させている」とは、公務員の方々に失礼な発言だと思います。

旧姓と使い分ける手間とリスク

例えば、保育園や小学校から会社に電話がかかってくることがあります。「西端さん、いらっしゃいますでしょうか。お子さんが怪我をしました。すぐ来てください」と言われても、「西端さんって誰?(会社では旧姓を名乗っているので周囲の人は戸籍姓を知らない)」となることがあります。もし災害が発生し、急いで本人確認をする必要があったとしたら、大変恐ろしいことです。

「はぁ?」なのですけど、いまのご時世、緊急連絡は自分の携帯電話にかかってくるようにしますよね。その次は配偶者でしょうか。

会社の共通電話番号にかかってくるようにするヒトなんて、迷惑以外の何ものでもないのですけど、ご自身の会社(サイボウズ社)は、こんな遅れた組織文化なんですかね。

緊急連絡を、ご自身の携帯電話ではなくて会社の電話番号にかかってくることを前提にして、この論理を展開している感覚のほうが恐ろしいです。

ちょっと考えれば「そのケースはない」と分かることだと思うのですが、恐らくこじつけをされているのだと思います。

私は、以前、アメリカに出張したとき、深夜にホテルに到着したのですが、先方が用意してくれたホテルが「AONO」の名前で予約されていたため、パスポートの姓と違うことを指摘されました。ホテルのフロントで「あなたがAONOであることを証明してください」と言われて狼狽しました。

このときは改姓手続きをしていない古いクレジットカードが一枚残っていて助かりましたが、法的に根拠のない名前を仕事で使うのは危険です。

これは先方も含めてのやり取りなので、回避が難しいかもしれませんが、こんな事例、全体の何%ですか?

あるときには自分を通してもいいけど、あるときには「郷に入りては郷に従う」を無視すると、こんなことに限らず、同じようなことは起きますよね。

それとこれって、パスポートに旧姓を併記すれば、最小の労力で解決しそうな気もします。

プライバシー情報が漏れる

結婚しているかどうかは、プライバシー情報です。結婚してるかしつこく聞いたらセクハラになりますね。にもかかわらず、今の制度では様々なところで改姓が必要で、「結婚しました」という情報を漏えいしまくっています。日本は、国を挙げてセクハラしたいんでしょうか。

今、国の方針で、マイナンバーカードやパスポートなどで、旧姓を併記できるように進めています。私の名前だと、「西端(青野)慶久」という表記になります。「西端(青野)慶久」...。一目で結婚していることがわかりますね。プライバシー情報の漏えいを推進する国の方針にしびれます。

左手の薬指に指輪をすることは、強制ではないから文句をつけないのでしょうか。

ある意味では、既婚かどうかわからないと、そのお相手に、お付き合いを前提として食事に誘ったりしていいのかどうかも分からないですよね。

既婚者である立場からすると、自分の妻、あるいは夫に対して、恋愛対象としてアプローチされ続けるよりは、既婚であるということでそれをしない、という状況の方がよほど安全です。

結婚したかどうかは、周囲に分かる状態にしておいた方がいいですよ。社会生活をいろいろ考えると。

それから、マイナンバーカードやパスポート、、、誰にどれくらいの頻度で見せますか?そして必要な局面で必要なヒトにのみ見せますよね?

姓が変わることでプライバシー漏洩というのはこじつけもいいところだと思います。

そして上記で書きましたが、パスポートに旧姓が併記されたら、アメリカでのホテルで起きたようなことは無くなると思います。

システム改修コスト

国の方針に従い、マイナンバーカードに旧姓を併記するためのシステム改修費用として、総務省が100億円を補正予算案に計上しました。詳しくはこちらの記事をお読みください。なんでそんなにかかるのかツッコみたくなりますが、選択的夫婦別姓制度ができるようにならない限り、日本中の様々なシステムで同様の改修が続くことを懸念します。

逆に、選択的夫婦別姓制度を採用したときには、戸籍情報システムを改修する必要が出てきます。法務省は、戸籍情報システムの仕様書(PDF)を公開しています。仕様書を読む限りでは、各個人ごとにレコードがあり、かつ「氏」と「名」のデータを両方持っています。同一戸籍に別姓の夫婦が存在できるようにする改修は、それほど大変ではないと思います。

旧姓を併記するのに100億円かかって、そのあとの関連システムに同様の規模の改修が続くと懸念すると言及しているのに、

どうして選択的夫婦別姓に変更したときは、データ変更だけでOKになっていて、関連システムの改修のことに触れていないのは意図的なのでしょうか。

マイナンバーカードに旧姓を併記するためのシステム改修が100億円だとすると、夫婦別姓で運用が回るようにするための初期開発だけでも桁が1つ以上増えると思います。

そして、同じように、日本中の様々なシステムで同様の改修が入っていくことでしょう。で、これはコンピュータシステムだけではなくて、帳票その他、相当な範囲で影響すると思います。

ブライダル関係の民間にも影響するでしょう。そのコストも含めると、天文学的コストだと思うのです。

その結果、便益を得られるのは、夫婦同姓だと結婚しないと言っている人たちだけです。

繰り返しますが、私は、自分の税金がそのヒトたちのために使われるよりは、別のことに使ってほしいです。

ふと思いますが、別姓だと、ちょっとした家族証明の手続きで、毎回住民票が必要となって、手間だから公的書類が不要なときは同姓で記入するとかも出てきそうですね。

ブランド資産の毀損

女子差別撤廃条約から3回も法改正の勧告意見が日本に対して出されているにもかかわらず、日本はそれを無視し続けています。

私たち日本企業は、日本という国のブランドを背負って事業を展開しています。世界各国で優秀な女性を採用するためには、私たちが女性差別のない日本の企業であることを信頼していただかなくてはなりません。

しかし、彼女たちに、「女性差別を解消しようとしない日本の企業では働きたくない」「日本は文化的に遅れた国だから、日本の商品は買いたくない」と思われても仕方がない状況です。日本は、選択的夫婦別姓制度を進めないことで、日本に対する信頼を失い、そして日本企業の信頼をも失い、経済的に大きな損失を与えています。

これは事実関係がわからないのですが、本当にそうなのでしょうか。

日本人が異文化のヒトに対する接し方のレベルが絶望的に低いのは私も思うところがあって、そのせいで外国人の優秀なヒトが日本企業で働くよりも、他の国の企業で働くとかは残念です。

なにかにつけて「一体感」がないと気がすまない日本人の会社だと、会社との一体感なんて知らないよ、あくまで契約関係だよね、という文化圏のヒトからすると「はぁ?」だと思って忌避することはあると思います。

ただ、日本が夫婦別姓ではないから日本の企業で働きたくない、というようなヒトがどこまでいるのか。。。

その国の名前の構造なんて、ちょっと教養のあるヒトからすると、長い文化的なあり方の結果であることを知っているから、そこにとやかく文句を言うことこそ文化的に遅れたヒトの発想だという認識もあると思います。

世界と合わせてばかりの国こそ、自分たちの芯が見えず、信用されないことでしょう。

これもこじつけだと思います。だいたい、今の日本を、今の地位にした時代は、夫婦同姓時代のことです。

※※※

以上のような次第で、「夫婦同姓がNG」理由も、

半分以上は、社会のためというよりは、自分の不都合を無くしたい感じだし、こじつけも多いし、占い的なものもあったりで、結構お粗末な感じなので、やっぱり私は、こんな人達のために、自分の税金を使ってほしくない、と思うのでした。

それよりは、たとえば幼児教育にもっと税金を使った方がいいと思うし、教育も横並び教育なんてしなくていい環境を作ってほしい(パーソナライズは一律教育よりもコストがかかる)し、学校教員の選抜方法も変えた方がいいと思うし、国全体としてのIT教育の環境を整えてほしい。。。

このあたりのことに自分の税金を使っていってほしいものです。

記憶の糸夫婦別姓問題 情理と論理のバランス感覚の欠如

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